『卓球グッズ2016』やっと読み終えました。

卓球グッズ2016 2016年 07 月号 [雑誌]: 卓球王国 別冊



【目次】
●バタフライは終わりか。それとも始まりか。
 テナジーvsポストテナジー 第2章
●木材ラケットに未来はあるのか?
●再発見! 表ソフトラバー
●卓球シューズ 自腹買い体験リポート!
●ブランド別・2016NEW GEAR 新製品大カタログ〈イチオシギア試打付き〉
●2016こだわりのオリジナルグッズ〈試打レポート付き〉
●打球感って何だ!?
●こだわりすぎた男たち
●卓球用具座談会〈カット編〉
●グッズストーリー~平野早矢香


年に一度発売される、用具に特化した卓球王国の別冊なんだけれど、その企画力と取材力の高さに脱帽させられる内容であった。

中身が濃過ぎてどれをピックアップすれば良いのやら迷ってしまうが、個人的にはやはり「再発見! 表ソフトラバー」を非常に興味深く読んだ。

この中で、表ソフトの開発について5メーカーの担当者の声を紹介しているのだが、共通するのが「裏ソフト以上に開発が難しい」ということ。

例えば、TSP&VlCTAS(ヤマト卓球)の商品開発部の仲村錦治郎さんは次のように語っている。

   表ソフト開発では使いやすいラバーである以上に、相手がやりにくいラバーにする必要があります。そのため、テンションのかけ具合など、細かい設定を裏ソフト以上に慎重に行います。試打も裏ソフトの10倍くらい繰り返しますね。

表ソフト開発が難しいのは、粒形状やゴム質などにより性質が多彩になる、というのが理由のひとつ。
そしてもうひとつは、表ユーザーはマニアックにこだわる人が多く、要求も多彩であるということ(両立が難しい「回転力とナックルの出しやすさ」の両方を求める声が多い、など)。

メーカー各社の苦労に頭が下がる思いだが、日陰の存在となっている表マンたちのために、1枚でも多くのこだわり表ソフトを開発してもらいたいものである。

さらに、縦目と横目では、ラバーの性質は本当に変わるのか? というのを検証するため、同一ラバーを縦と横の2方向で貼って比較した結果も掲載されている。

今後の表ソフト開発に少なからず刺激を与えそうな面白い試みである。
各メーカーがこうした遊び心をどんどん実践し、新たに斬新な表ソフトが生まれることを期待したい。


打球感って何だ!?

一口に「打球感」と言っても、その感覚は人それぞれである。
しかし、人それぞれならば、広告の打球感を示す表示は意味がないのではないか? 打球感に対してそんな疑惑の目を向ける、編集部の渡辺トモさんが、その正体を突き止めるべく調査をする、というヤンチャな企画が「打球感って何だ!?」である。

トモさんは6つの調査を行っているが、例えば[調査①]では、「ソフト・ハード」の疑問について調べている。

カタログなどには、ラケットの打球感を「ハード」「ソフト」で表現しているメーカーが多いけれど、それを決める基準は何なのか? について、各メーカーに聞いているのだが、例えばヤサカ的見解はこうだ。
 
   ヤサカの場合は、「感覚」というよりは、ラケットの「硬さ」を表している部分がありますね。硬い素材で高い音が鳴るものがハードで、柔らかい素材で低い音はソフトです。実際には同じハードでも、「手への響き方」はラケットによって感じ方も変わるので、正確に表現するのは難しいですね。

打球感の定義というのはあいまいなので、ヤサカに限らずどのメーカーでも正確に表現するのは難しいようである。

そんな中で、「ソフト」「ミドル」「ハード」という表示をやめ、新しく「振動特性」という要素を作り、数値で表すことにしたのがバタフライだ。

バタフライ研究開発チームの早瀬満さんは次のように説明する。
 
   測定しているのは、「単位時間あたりの振動数」です。硬い素材や厚い素材の場合は、小さく速く振動するので、単位時間の振動数は多くなります。これを「振動特性が高い」と表現しています。逆に軟らかい素材や薄い素材は、大きくゆっくり振動するので振動数は減り、「振動特性が低い」となります。
   傾向で言えば、振動特性が高いものは、硬く、手に響かず、打球音も高くなるので、一般的に言うところの「ハード」寄りになり、反発力も高めになります。(後略)


数値化されると確かにわかりやすいですよね。
ただし、この振動特性はあくまで打球感を作るひとつの要素なので、「振動特性が同じ=打球感も同じ」ということではないとのこと。

素材や厚さ、ラバーの影響などにより打球感も変わってくるので、ひとつの指針として参考にしてくださいと早瀬さんは言う。


私も、他人の感じる打球感はどこまで当てにしていいものだろうかと考えることがよくあるのだが、このトモさんの大調査のおかげで、どのくらい信用すべきかが自分なりにわかった気がする。

打球感に振り回されて右往左往している「打球感迷子」の人はぜひ読んでみてほしい。


そんなわけで、卓球グッズ2016は、どんな卓球マニアであっても満足させられるであろう、コアな情報満載な一冊であった。

星3つです! (マチャアキ風)。